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がん遺伝子治療の実際がん抑制遺伝子

1987年、細胞のがん化を抑える「がん抑制遺伝子」の存在が発見されました。 細胞内の核に存在する遺伝子は、細胞の複製のために必要なすべての情報が含まれています。

DNAの分子は二重らせん構造により複製ミスを防ぎます。細胞のがん化をもたらす遺伝子も細胞の分化には必要ですが通常はがん抑制遺伝子によって活動を抑制されています。

がん細胞の発生につながるタンパク質を分解する抑制遺伝子は全身に存在していますが 何らかな原因で正常な遺伝子が、がん遺伝子に変異するとともに、放射線や紫外線、科学物質などによって、このがん抑制遺伝子が損傷してしまった場合に、正常細胞にがんを発症させることがわかっています。

ゲノム医療により細胞のがん化が解明できるか

現代、細胞のがん化について未だに解明されていいません。生物学(自然界で生きているあらゆる“生物”を研究する学問)医学(臨床・基礎研究)では、標準治療であろうと、革新的な治療であっても持続的な奏効をもたらすがんの治療法は存在しません。

固形がんの治療は「局所治療」と「全身治療」に大きく分けられます。がんが発生し た原発巣とその近傍の少数の転移であれば、手術や放射線などの局所治療で“治癒”が期待できます。

異常ながん抑制タンパク質が正常ながん抑制タンパク質の機能を阻害すると、細胞に特異的にがん化が起きると考えられています。正常な細胞にはがん抑制遺伝子が存在して、細胞のがん化を防ぐ働きをしています。

現在までにシグナル伝達経路別に遺伝的変異として、Akt(点変異、増幅、発現増加)Cdk-2(増幅、発現増加)MMR遺伝子(点変異、発現減少)などがあります。また、抑制タンパクとしてPTEN(点変異、欠損)p16(点変異)p53(点変異、欠損)などがあり私たちの身体には、まだまだ多くのがん抑制遺伝子が存在していると考えらます。

これらのがん抑制タンパク質の機能は細胞周期チェックポイント制御、転写因子制御、転写、DNA修復など多岐にわたっています。これらのがん抑制遺伝子群の諸機能が解明されることにより、がん発生メカニズムの巨大な謎が解りつつあると考えられています。

標準治療以上に自由診療の治療成績がよいということではありません

【目次】
がん遺伝子治療の実際
CDC6タンパクとRAS(ラス)タンパク
シグナル伝達のシステム(細胞分裂の周期)
遺伝子レベルでのがん治療
がん遺伝子治療の機序
がん細胞の遺伝子セット
遺伝子治療方法 手順(プロトコール)
「未承認薬」「適応外薬」
がん遺伝子治療を選択するとき
がん遺伝子治療とセカンドオピニオン

CDC6タンパクとRAS(ラス)タンパク

CDC6タンパク 細胞分裂を調整するタンパクで正常細胞では産生が抑制されています。がん細胞の中には正常細胞には見られない大量のCDC6タンパクが存在しており、増殖速度がはやいがん細胞ほど、その量が多いことが分かっています。その結果、がん細胞は無限に分裂して増殖していきます。

がん細胞に大量に発生しているCDC6タンパクをRNA(リボ核酸)干渉により、がん細胞の分裂を止めます。RNA干渉を用いて、がん細胞の遺伝子の発現を抑制することが可能です。RNA干渉の技術は、多くの創薬に繋がる大きな可能性を秘めています。しかし、すべてのがん細胞にあてはまるかは証明されていません。治療適応が不明確な課題もあります。

がん遺伝子パネル検査で、CDC6遺伝子変異の解析項目はありません


RAS(ラス)タンパク 細胞の増殖などに関わるタンパク質のひとつにRAS(ラス)タンパク質があります。このRASタンパク質を作り出す遺伝子に変異が起こると、必要のないときにも細胞が増殖し、がん細胞が発生する確率が高くなると考えられています。多くのがん種でRAS遺伝子変異が確認されています。

RAS遺伝子変異があると、EGFR(イージーエフアール) タンパク質の働きを妨げる薬剤の効果が得られないがん種もあります。がんゲノム医療による検査は行われています。 カテーテルを使用してRASタンパク質の働きを抑える血管内治療も有力だと思われますが、 国内ではRAS遺伝子変異を阻害する薬剤は開発されていません。

シグナル伝達のシステム(細胞分裂の周期)

細胞増殖のシグナル伝達がん細胞ひとつだけでも2万個以上の遺伝子があります。複雑な遺伝子の全てを解明できてはいませんが、がん遺伝子と正常な細胞の遺伝子との違いはわずかで、がん細胞のシグナル伝達のシステム異常を抑えます。

細胞分裂の周期はG1、S、G2、Mの4つのステップがあり、そのひとつに細胞を増殖させるために発現するCDC6タンパクがあります。正常細胞では1回の細胞分裂サイクルに1度だけG1期に発現しますが、がん細胞においてはCDC6が細胞分裂の全周期に現れます。

このCDC6の大量発現によって、がん細胞では無限増殖、がん抑制遺伝子の不活性化などが起こり、がん細胞を増殖させる一因となります。がん細胞増殖周期を遮断して、その増殖を止めます。

がん遺伝子が作る変異型タンパク質は正常な細胞のアミノ酸と数個しか違わないことがあります。

しかし、このアミノ酸の違いが、タンパク質の機能を大きく変えてしまい、細胞増殖のシグナル伝達の異常をおこします。結果がん細胞が自己増殖シグナルを出し続け、無限増殖ができると考えられます。

「がん細胞の無限増殖能に関わるCDC6タンパク」を標的とする「RNA干渉」を利用しています。

G1/S・G2/Mだけではなく、Aktシグナル伝達経路、TGF-β/Smadシグナル伝達経路などにもより、ヒトのがん遺伝子とがん抑制遺伝子は細胞周期別に違うタンパクが発生します。

がん細胞が分裂するときのシグナル伝達経路毎に違うタンパクを生成します。 がん種別によっても違ことがゲノム検査でわかっています。同一の療法の遺伝子治療で伝達経路毎に違うタンパクの生成を抑えることは難しいのが現状です。

遺伝子レベルでのがん治療

がん遺伝子治療製剤をがん細胞に運ぶベクターであるレンチウイルスによって効率よくがん細胞の核に入り込み、がん細胞のみでCDC6タンパクshRNAが作用して、がん細胞の中のCDC6タンパクが作られなくなります。

CDC6タンパクが枯渇すると、がん細胞の無限増殖が停止します。

CDC6は細胞分裂の際のDNAの複製や合成において重要な役割を果たすタンパクです。正常細胞においては細胞分裂サイクルの一時期にしか発生しませんが、がん細胞においては細胞分裂サイクルの全ての時期に発生しています。

がん遺伝子治療は特異的に発生するがん細胞の抗原を認識し直接がん細胞の遺伝子に作用をします。

身体の免疫が、がん細胞を抑制することを主眼としていることに対して直接変異したがん細胞の遺伝子に作用し正常細胞に導きアポトーシス(がん細胞の自然消滅)させる作用があります。

未分化がん・耐性を獲得したがん細胞でも正常細胞に導きます。

※明確な薬理作用の効果を証明することは公的な第三者が厳密なルールに沿って臨床試験を行います。遺伝子治療は公的な制度で明確な有効性、科学的根拠は確認されていません。再発や転移をした場合も同様です。最後まで希望を失わせないことができるなら、患者さんも代替療法に頼らなくて済むはずです。一定の有効性と安全性が評価された治療法のみ、公的医療保険の対象になります。

標準治療では根治が望めない病期のがんに対しても淡い期待を抱かせ「がん遺伝子治療」に誘導します。 しかし、根治が望めない病期に対して有効性があるなら何十年も前に正式に治験の対象になっています。 正しい情報は、まだがん遺伝子治療は先進医療でもなく、保険適用のための治験の対象にもなっていません。 現代医学に見離された患者さんが、エビデンスのない自由診療(代替療法)に頼っていくことは不利益だと思っています。 それなら、医師が少しでも話を聞いて納得させてあげることのほうが患者さんのためになるとのではないでしょうか。

がん遺伝子治療の機序

遺伝子と染色体細胞やタンパク質の構築、DNAの複製などの研究が進み、基本的に細胞が分化(細胞分裂)する方法は基本的に1通りであるのに対して、細胞の解体、タンパク質の分解、遺伝情報の消去や抑制の方法が何通りも用意されていることがわかりました。

身体は年齢とともに細胞に老廃物がたまり変調がおこります。身体は先回りして自ら細胞やタンパク質を壊し、分解しつつ新しい細胞をつくりなおします。

常に動的な状態を維持することによって不足があれば補い、損傷があれば修復します。また一定の間隔で新しい細胞に引き継ぎます。これが正常な細胞のアポトーシス(細胞の自然消滅して新しい細胞に置き換わる)です。

がん細胞では、大量のテロメア合成酵素(テロメラーゼ)大量に存在しています

「テロメア」の伸長はテロメラーゼと呼ばれる酵素によって行われていますが、細胞分裂のたびにDNAは複製されますが、末端は複製されないのでテロメアは徐々に失われて短くなります。そうなると細胞は分裂することが出来なくなりアポトーシス(プログラムされた細胞死)し、細胞の役割を終えます。

がん細胞では、テロメア合成酵素であるテロメラーゼが大量に存在しておりテロメアの長さを維持して無制限に分裂を繰り返します。

テロミアは、正常細胞の細胞分裂にも必要です。様々なタンパク質からなる染色体にある構造です。加齢にしたがってテロメアが短くなっていき細胞が分裂できる回数はおよそ70回までで、これを超えると増殖せず「細胞老化」という状態になります。

細胞の状態に応じて、これらのタンパク質複合体の活性酵素が変化することで、テロメアの制御を行っているために細胞の老化は細胞分裂を止めることで「染色体」の不安定化が起こることを阻止し、発がんなどから細胞を守る働きがあると考えられています。

がん細胞を自然な形でアポトーシスさせるためには、秩序なく増殖するがん細胞の遺伝子を正常な細胞と同じ状態にしなくてはなりません。がん細胞は正常細胞よりはやく分裂しています。

身体の免疫ががん細胞を抑制することを主眼としていることに対して直接変異したがん細胞の遺伝子に作用し正常細胞に戻す作用があります。

がん細胞が分裂するにつれて正常な細胞と同じアポトーシスできる生体環境を作ることで、がん細胞の増殖が止まります。正常細胞に戻る過程でがん細胞をアポトーシスに導くことが遺伝子治療の機序です。

がん細胞の遺伝子セット

正常細胞にもがん細胞にも10万個以上の遺伝子セット(遺伝情報)が備わっています。身体の組織を構成する細胞の形や機能が違っているのは遺伝子セットが微妙に異なるからです。

遺伝子セットは細胞の増殖、分化を行います。がん遺伝子も正常細胞の増殖、分化には欠かすことはできないことがわかっています。

細胞の核、染色体に遺伝情報が蓄えられています

これらの遺伝子情報の働きをすべて解明するには気の遠くなるほど時間がかかります。
DNAの4種類の塩基(A)アデニン、(G)グアニン、(C)シトシン)、(T)チミン(T)

p53遺伝子は私達の身体の正常細胞の分化にかかわっていることも知られています。

通常はp53タンパク質は転写因子として働き、遺伝子群の発現に関与し多彩な生理機能を持っています。

p53遺伝子が正常に作用しているときは良いのですが、何らかの原因でp53遺伝子が損傷すると正常細胞が異形細胞に陥った状態をくりかえします。P53遺伝子が正常な機能を果たせず増殖周期が無軌道となり、異常な増殖を引き起こします。

悪性腫瘍(癌)において最も高頻度に異常が認められています。DNAが修復不可能な損傷を受けた場合に、癌細胞のアポトーシス(自然な細胞死)に誘導されにくくなります。多くの悪性腫瘍においてp53遺伝子の変異が認められます。

Mdm2(がん抑制作用を有するp53の活動を抑制的に調整する遺伝子)は、がん細胞の抑制作用を有するp53の活動を抑制的に調整する遺伝子です。がん細胞はp53の働きを抑制するMdm2を持っている場合が多く、遺伝子治療で使用する治療タンパクではMdm2を阻害します。

遺伝子変異はP53、RB遺伝子だけではなく、今後もがん化する遺伝子・抑制遺伝子が解析されることが期待できます。

遺伝子治療方法 手順(プロトコール)

遺伝子治療方法・手順(プロトコール)多くの医薬品は、使用量を「mg」や「mL」などで表しますが、「単位」を使用しているクリニックもあります。一般的なモノの大きさの基準を示す言葉の「単位」とは別の意味で、英語表記だとUnit(U)と表現されます。

しかし、航空便で輸入されるときは、容器に1cc/vialの凍結保存(ー86度)の状態で100本単位で入ってきます。それを、単位にする意味も「1単位」が1ccなのか不明です。

2ccの原液に40億個分のがん細胞に反応するCDC6shRNAが含有されております。

siRNAはRNA干渉(二本鎖RNAと相補的な塩基配列をもつmRNAが分解される現象)によってCDC6タンパクの発現を抑制します。 存在するがん細胞の数に対して薬剤の投与量が少ないと、がん細胞の増殖が完全に止まらないために縮小、抑制効果が得られません。直径1㎝ほどの固形がんには約10億個のがん細胞が含まれていると考えられています。

治療方法は1回に遺伝子治療薬cdc6を2cc以上を使用し、生理食塩水で希釈して点滴や局部注入を併用した、治療方法が行なわれています。

理論上は2ccの投与で進行した固形がんの増殖を抑えることができると考えられます。遺伝子治療製剤cd6は1回の投与量は2ccが基本です。生理食塩水(100cc~200)で希釈して約30分くらいで静脈点滴で投与します。

遺伝子治療は、状況に応じて点滴とがん組織の近くに局所注射を併用します。部位によっては病巣に流入するリンパ経路をもとにして遠隔部位へのリンパ管に局注をします。

胸水や腹水が溜まっている場合は胸腔や腹腔内に注入します。血管造影の手技を用いて動脈よりカテーテルを用いて選択的に腫瘍へ注入する場合もあります。

遺伝子治療に用いる薬剤は液体で-86度の凍結保存しています。
移動はドライアイスを使用して-86度を保ちます。
治療する1時間前に氷水にて解凍します。
治療は病状の状態により1クールを4回または8回として、週1〜2回の治療です。
1回の量として2cc以上の濃縮活性タンパク質を基本的に静脈点滴で投与します。
転移部位が多い場合は追加投与も可能です。
正常細胞を破壊しないので、抗ガン剤を大量に投与した時のような直接的な副作用が少ないことが報告されています。
静脈点滴30分くらい後に37~38度の微熱と軽度の悪寒がある場合もありますが、2~3時間で平熱に戻ります。これは一時的な抗体反応です。

遺伝子治療は抗がん剤と併用することによって相乗効果があるという科学的根拠はありません。また保険適用ではなくすべて自由診療でおこなわれています。薬剤は国産ではなく海外からの輸入です

「未承認薬」「適応外薬」

注射用遺伝子製剤 「未承認薬」

アメリカ食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)といった海外の政府系機関が安全性と有効性を確認して、承認したにもかかわらず、日本では厚生労働省の承認がなく保険適用外の薬剤です。


「適応外薬」

日本国内で承認されていても、適応疾患以外の病気に対して処方するときには保険適用外となってしまう薬剤です。例えば肺がん、胃がんで厚生労働省の承認を受けている薬剤でもそれ以外のがん治療に対しては保険適用外になってしまう薬剤です。

単独では承認されていても併用して使用した場合「適用外」の例もあります。

海外での承認と日本での承認の間に生じる時間差それを「ドラッグラグ」と呼びます。

がんの先進医療は様々ありますが、自由診療で使用されている遺伝子治療薬は「核酸活性タンパク複合体」はアメリカで開発され、中国で製造承認された薬剤です。
※日本で行われている遺伝子治療は海外の政府系機関が安全性と有効性を確認した訳ではありません。

※明確な薬理作用の効果を証明することは公的な第三者が厳密なルールに沿って臨床試験を行います。治療適応が不明確な課題があります。多くの免疫治療や遺伝子治療は公的な制度で明確な有効性、科学的根拠は確認されていません。

21世紀のがん治療は、生体にダメージを与えないこと。そして個々の患者さんにあった個別化された治療であることが望まれています。がん細胞の多様性を考慮すればその治療が画一的であってはならないと思います。

がん遺伝子治療を選択するとき(保険診療の適用にはなっていません)

がん遺伝子治療もさまざまな種類がありますので、有用な遺伝子治療を考えてるい方には最適なアドバイス・サポートができると思っています。

がん遺伝子の変異を特定することで治療効果が期待できる薬剤を探す検査「がん遺伝子パネル検査」もありますが、手術の対象にならないほど進行した固形がんや、手術後に再発した場合は、残念ですがほとんどの場合、延命やQOLを目指す治療になります。いまの抗がん剤ではがんは完治できません。

免疫チャックポイント阻害剤の第一選択での使用は少なく、未知の副作用があるため主治医も積極的に使用しません。数年前までは、夢の新薬とまでいわれていましたが、有用性があると判断した症例でも有効率も10~15%です。この場合の有効率は、抗がん剤も含めて投与すると、確かにがんは縮小しますが、いくら縮小されても投与を休めば増殖してきます。

骨髄抑制(白血球の減少、血小板の減少など)の副作用もありますから、続けて抗がん剤の投与をすることはできません。耐性のこともあり抗がん剤などでは、完治することはできません。限界があることを伝えざるを得ないことは治療をおこなっている医師にとっても辛いことです。しかし、これが現在の標準治療です。

有用性が見込まれない方やもはや抗がん剤による延命治療も受けられなくなった方々、抗がん剤治療の副作用があまりにも強く生活の質が著しく落ちてしまった方々。そのような方々が生活の質を下げることなく厳しい状態でも、希望を持って望むことができる最善な治療法一緒に考え選択しましょう。

「本当に、もう治療をあきらめなくてはいけないのか?」 日常生活の自立が可能な状態なのに、主治医から有効な治療法がないと伝えられた方に、『大きな副作用がなく進行がんからの回復が期待できると思いたい。』

標準治療をガイドラインとしている大学病院、基幹病院などでは「セカンドオピニオン」を求めても、納得する答えは出てくることは少ないです。

がん遺伝子治療とセカンドオピニオン

がん遺伝子治療 がん治療相談  がんの治療は外科手術、抗がん剤治療、放射線治療のいわゆる標準治療(三代治療)が柱となっていますが、これらの治療が有効なのは初期段階のがんの病期です。難治がん、末期がんには無力といわざるをえません。ステージの進んだ進行がんの治癒率は低くなりますが、こういう場合でも標準治療が適用されることが多いです。

自由診療のクリニックでは、Webなどで標準治療を認めつつも最終的には「再発・転移」の話を出して代替医療や遺伝子治療などの自由診療に誘導することも多いです。

臨床的に実証されてもいないものを有効性があるとか、効果があるなどというのは医者の倫理からいっても許されるものではありません。

※何か適切な治療方法がないのかとの質問、相談をしばしば受けます。その中には遺伝子治療についての問い合わせも多く今回記載しました。


一時免疫療法を受けられる方もいましたが、効果の体感が十分でないことが多く、費用の面でも負担が大きいことから今は、受けられる方は減ってきました。がん遺伝子治療の効果には個人差はあります。治療用の遺伝子が、目的のがん細胞にうまく導入される効率は、必ずしも一定していないためです。

遺伝子治療は可能性の仮説です。科学的根拠(エビデンス)はありません

遺伝子治療は標準治療以上の有用性があるかなような言い回し、表現をしますが可能性の仮説です。科学的根拠(エビデンス)はありません。治験や薬学調査などの研究結果から導かれた「裏付け」があることが当然ですが、日本では正式にあるわけではありません。大きく宣伝されたりしているというだけで、薬剤や治療法を選ぶのは危険です。

同じ臓器から発生したがんでも、個々によって性質が異なります。がん細胞内の遺伝子が異なるからです。現在の変異した遺伝子を調べる「がんゲノム医療」は新しい治療法です。しかし、承認されているがん遺伝子治療臨床研究に、既存の薬剤は含まれていません。

JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)国立がん研究センター中央病院臨床研究支援部門が研究を直接支援する研究班の集合体ですが、申請も提出されていません。
また、GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)もクリアしていないので、治験の対象にもなっていません。

新たながんの治療法として、遺伝子治療への期待が高まっていますが、がん遺伝子治療は決して現状では絶対的な治療法ではありません。なぜ特定の細胞ががん化するのかヒトゲノムの完全な配列を解析することができた現在も根本的なことはわかっていません。

「末期がんの進行を抑え、延命効果がを得る可能性がある」 しかし「進行して臓器不全に陥った状態では効果が乏しい」といっているクリニックもあり、低侵襲のがん治療といっておきながら、抗がん剤を含めた標準治療との併用も勧めています。

新生血管を阻害して、傷ついた遺伝子を正常な遺伝子に戻す治療です(白血病以外すべてのがんに適応できます)と記載されたホームページもありました。承認された医薬品には有用性があっても、法律上事実を記載することしかできません。しかし自由診療には事実上、規制がなく、いくらでも「体へのダメージが少なく」、「副作用が極めて小さい治療法」とか「画期的な治療法」など宣伝し放題なクリニックもありますから熟慮してほしいです。

治療適応が明確に規定されていなく投与例の延回数は公開していますが、治療効果の判定がはっきり公開されていません。数人の有効性であっても、投与した方ほとんどに有用性がある錯覚をもたせます。

自由診療として行われる「遺伝子、免疫療法」などは、有効性が証明されておらず、医薬品として確立されたものではありません。治療費は全額自費で支払う必要があります。自由診療のクリニックでは診療科に関係なくほとんどの臓器の疾患に対応しています。

現実的に頭頸部、呼吸器系、乳腺、消化器系(食道・胃・腸・肝臓・胆のう・膵臓など)上げたらきりがありません。臓器別の専門性がありません。内科も外科も関係ありません。これでは、がんという病気が全身病との考えにたっても一過性がありません。改善されたとはいえ薬剤の、克服すべき技術的な課題などがまだいくつもあります。

がん細胞に大量発生している増殖性タンパクを阻害してがん細胞の増殖を止める作用機序ですが、がん遺伝子パネル検査でも特定の遺伝子変異の解析項目はありませんので仮説です。

信憑性の低い情報として『標準治療によって完治される方は増えていますが、半数近くの方が再発を起こします。これが、現在の標準治療の限界といえるでしよう。 そこで更なる複合治療が求められます。それが「がん遺伝子治療」や「がん免疫療法」なのです。標準治療にがん遺伝子治療とがん免疫療法を加えれば、再発予防になるひとつの治療法と考えられます。』と記載されていました。

がんの再発予防とありましたが、日本癌学会、日本癌治療学会などでも 正式に演題、抄録(研究の目的とその意義を理解してもらえるように、必要な部分だけを書き抜くこと)など見たことも聞いたこともありません。日本癌学会などに登録している医師の数は数万人いますが、ほとんど知られてはいません。

がん細胞の増殖機構を阻害して、正常な細胞に戻すことは、仮説はありますが臨床的に実現できていません。「遺伝子治療」と言うこと自体不自然な気がします。

標準治療をもってしても、進行がんや末期がんを完治させることは容易ではありません。にもかかわらず、自由診療で標準治療以上の期待を抱かせる遺伝子治療情報が非常に目につきます。誇張された表現を使うウェブサイトを見ると、たいていは、巧妙な手口で営利目的のクリニックなどにリンクされています。投与量、投与スケジュール、治療期間等が記載されたレジメン(治療計画)がそもそも確立されていません。

例えば【がんを選択的に攻撃】とか【がん抑制遺伝子を再びがん細胞へ導入する治療です】などと記載されているホームページもありますが、ベクターからがん細胞にどのくらいがん抑制遺伝子が届くのか皆目わかりません。がん遺伝子治療専門医なども存在していません。他に遺伝子療法以外の違う療法もしています。

「遺伝子治療」「がん遺伝子治療」「標準治療」を同一に扱って混在させるているサイトもあります。 また、【がん遺伝子治療が今後のがん治療の主流になりえると考えられます。】とありますが、 その治療を取り入れていない医療施設や療法を受けない患者さんは、恩恵にあずかることができなく不利益をこうむることになるのでしょうか。 保険適用になっていませんので、自由診療という扱いのため高額の治療費にもなっています。

新薬の臨床試験

ある腫瘍に対する新薬候補の承認を申請する際には、あらかじめヒトでの臨床試験で一定の有効性や安全性を示す必要があります。臨床試験は第Ⅰ相試〜第Ⅲ相試験と3段階に分けられていて、もっとも重要なのが最終段階の第Ⅲ相試験です。これまで最も一般的に使われていた薬剤(標準治療薬)と新薬候補の効果や安全性を比較する必要があり、標準治療薬より有用性などが認められると、そのデータを提出して審査を受けることになります。

国内で製造された「がん遺伝子治療薬」は厚生労働省の承認は得られておりません。
(一部の大学病院、専門病院で行っている治験は除く)

国内で製造した医薬品を販売・授与するためには、通常、医薬品製造販売業許可及び医薬品製造業許可が必要となります。さらに、許可のほかに、原則、取り扱う薬剤の品目ごとに医薬品製造販売承認(認証)を取得する必要があります。医薬品は有効性及び安全性の確保等に関する法律により規制されています。

◯日本においては、カルタヘナ法により遺伝子治療薬の医薬品製造許可は認証されていません。
◯自由診療で使用されている薬剤は全て日本以外で生産されたものです。
◯開発はアメリカでしたが、製造は中国製が多いです。
◯流通、保管も薬剤の専門でない、企業、個人が行なっているケースもあります。
◯標準治療以上の有用性があるのか、治療適応症例が不明確なことが残念です。
◯再発予防の科学的根拠(エビデンス)などはありません。
◯二重重盲検比較試験(ダブル・ブラインド・テスト)新薬(被験薬)の治療効果・有効性を確かめるための比較試験として最も一般的な方法ですが基幹病院での比較試験も行われていません。
◯クリニックによっては、呼吸器科、消化器科、婦人科など、どの臓器、領域の専門医なのかわかりません。呼吸器内科、消化器内科などの区別もつきません。乳腺科、婦人科も一緒に診療するのでしょうか。

この遺伝子治療について検討あるいは、始めようと考えている方に詳しくお伝えします。「耳ざわりがいい」言葉だけではありませんが、きっとお役にたつと思います。最適な治療法を決める上で組織にとらわれない立場で「がん治療」のご相談、最適な治療法のサポートをします。

体内に遺伝子入れるがん治療規制 厚労省作業部会設置へ


がんへの効果などをうたって自由診療で行われている、患者の体内に遺伝子を入れる治療を、2019年11月15日厚生労働省が規制する方針を決めたことが報道されました。

2003年にp53遺伝子を搭載したア デノウイルスベクターは中国で承認されましたが、日本は承認申請はなく、欧米では同様の製品が承認申請されたものの十 分な有効性が示されず承認には至りませんでした。

現在、遺伝子治療は臨床研究でも治験でもカルタヘナ法の関係で「大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)」、「日本医医薬情報センター(JAPIC)」、日本医師会治験促 進センター(JMACCT)」の3つの臨床試験登録機関のいずれかに登録が義務付けられていますが体内に遺伝子入れるがん治療の治験の申請は提出されていません。現在実施中の臨床研究は遺伝性疾患を含めても極少数です。

遺伝子治療は、がんや難病に対する効果が報告され、国内外で注目を集めている一方、安全性や有効性が不明な治療が、国内の60カ所以上で自由診療として行われている可能性があることが分かり、患者さんが危険にさらされる恐れがあるとの意見が出ていました。

厚労省研究開発振興課は「体内に入れた遺伝子による次の世代への影響も検証されていない治療が広がる恐れがある」と懸念する。 厚労省は今後、作業部会を設置し、法律や指針など具体的な規制の方法や対象となる技術を検討する。とのことです。
2021年厚生労働省 作成の「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書 」

日本では、「未承認薬」を使っての治療は、医師の資格があれば、専門領域に関係なく自由診療では患者さんに投与することができます。平等に評価されていない治療薬であっても、院内処方として投与することてができます。
「未承認薬」は、有用性があるか、安全性であるかなどまだ科学的に、確認がされていない薬剤です。海外で承認されていながら、日本では承認されていない薬剤と錯覚させる説明をします。標準治療より広く有用性があるなら治験の対象に入るのが普通です。詳細なデータはありません。

頼れるがん治療アドバイザーを目指します

がん治療は専門的な知識や判断が必要であるため、画像検査(CT・MRI)病理検査(採取された病変組織の病理学的診断)など踏まえた上で院内カンファレンス(病状検討会)を経て、最終的に主治医や担当医から検査結果、治療法について十分な説明を受けます。それに対して患者さんは内容をよく理解して疑問があれば解消し、納得した上で医療行為に同意します。

患者さん自身が治療に関して理解を深め、納得した上で選択した治療を進めることができるよういつでもサポートできるアドバイザーになりたいと思っております。悔いの無い治療を心より願っております。

がんの治療は、医師と患者さんとご家族の方の密接な連携が何より大切です。インフォームド・コンセント(納得と治療の選択)の普及の一助となれば大変意義深いことと考えております。

標準治療以上に自由診療の治療成績がよいということではありません

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がん治療の現状 手術(外科療法)
がん治療の現状 薬物療法(抗がん剤)
がん治療の現状 放射線療法
がん治療の現状 がん治療の難しい理由
がん治療サポート内容 最善のがん治療を受けるために
「がん治療相談」がん治療アドバイザーによるサポート
オピニオン(がん治癒への道)
がん標準治療を選択するとき
「がん標準治療」生存率
がん先進医療(精密医療)
がん免疫療法
がん発生メカニズム
がん再発・転移
がん幹細胞
がん悪液質(あくえきしつ)
がん遺伝子治療
標準治療以上に自由診療の治療成績がよいということではありません
新型コロナウイルの基本知識