ガンの再発や転移についての考え方

ガンの再発や転移「再発」「転移」というと異なった現象だと思われますが、再発と転移は本質的には同じでがんの病態です。どういう事かというと手術前に画像診断などでがん巣が原発とは違う部位に確認されれば転移、術後に確認された場合は再発と区別しているだけなのです。

がんは最初にできた原発巣と原発巣から転移したがん巣に分けられます。手術で原発のがんを完全に摘出されたならば原発からの転移はおこりません。再発がもし術後おこったとしたら、それはすでに手術の前に画像診断や腫瘍マーカーなどでもわからない微小な転移がすでにあったと考えられます。

よく5年生存率という言葉を聞きますが、微小転移のほとんどがこの間にわかるまでに増大すると考えられているからです。5年経過してがん細胞が確認できなければそのがんは治癒したと考えられます。手術が終わった時点でがんが治るか治らないかすでに決まっていると言っても過言ではありません。

再発がんの治療は、きわめて困難になります

再発がんは、大きくふたつに分けられます。 ひとつは、遠隔転移での再発です。
たとえば乳がんの手術後、肺や骨に転移が出てくるケースで、こうした遠隔転移での再発が最も多いのです。

遠隔転移した再発がんの場合、普通は手術は適応にはなりません。転移が認められた時点で、すでに全身病になっていると判断します。見える転移だけ切除しても、新しい転移が出てくるからです。

大腸がんの肝転移や肺転移の中には手術によって治癒するケースもありますが、それでも数%以下の低い確立です。

もうひとつは、局所再発です。これは手術に深く関係しています。十分にがんを切除できなくて、あとになって原発臓器や隣接するする臓器、リンパ節に再発してくる場合です。胸膜、腹膜播種などは局所再発として扱われていますが、治療では、遠隔転移と同じとみなされます。なぜなら遠隔転移同様にコントロールが不可能だからです。
遠隔転移と局所再発、どちらが多いかといえば、圧倒的に遠隔転移です。

再発がんの手術が意味があるケースがあるとすれば、がん巣が限局していて多発転移がないと見込まれる場合だけです。

検査を受けない期間も必要

例外はありますが、術後、1年以内に出てきたものをいくら切除しても、またすぐ再発してくる可能性が高いので、この時点で切除してしまうと短期間で、何回も手術しなくてはならなくなります。

短期間で何度も手術を受けるのは無意味ですし、患者さんの不利益になります。検査を受けない期間が長くて、その間に起こる二次転移の可能性ですが、待っている期間に転移する確立はゼロではありませんが、きわめて低いと考えられます。

もし、原発巣以外に転移が出てきたとしたら、それは、手術を受ける前に一次転移が残っていた可能性が高いのです。

微小な転移は現在の医学では手術直後でも分かりません。しかし中には成長の遅いがん細胞があり、5年の間にゆっくり成長するがん細胞もあります。このようながんの場合がん細胞の成長がゆっくりしているので、直接命にかかわることはないと思います。

では仮に短期間に再発がんが発見された場合はどうすれば良いのでしょうか。再発がんは早く発見しても治療は大変むずかしく、現在の医療(標準治療)では完治させることは困難です。早期発見、早期治療という言葉がありますが、それはあくまでも原発がんに対しての意味です。

ですから手術後に再発の定期検査はほとんどの場合、意味がないと言っても過言ではありません。何らかの自覚症状がでてから検査をして再発がわかって治療した場合と、無症状なのに定期検査をおこない再発が確認され治療した場合を比べると実は延命効果はあまり差がないのです。

なかには再発が無いのにもかかわらず化学療法をおこなう場合もありますがほとんど患者さんにとっては利益はありません。また再発がおこった場合は副作用がでるほど化学療法をしますし、場合によっては放射線治療を主体に治療をおこないます。痛みのある場合は効果がありますがそれでも現状は悲惨です。

実際はほとんどの医師や医療機関は術後定期的に再発の検査を受けるよう指示し、患者さんも定期的に検査を受けます。無症状で定期検査で再発が分かって治療をはじめても治療成績は同じですから、その間に受ける精神的ストレスは大変です。このことを医師ははっきりと患者さんに伝えることが大切だと思っております。

検査、治療を受ける側も充分承知して自分で治療法を選択するようにしないと本当の意味での医療というものは実現しないと思います。

遺伝子レベルで解明が進む!

がんの再発や転移転移のメカニズムですが所属リンパ節に転移があっても、他の臓器にかならずしも転移するとは限りません。

悪性のがん細胞は基底膜をやぶり浸潤します。がん細胞が血管やリンパ管の中に入ります。血流にのって血流の豊富な臓器に血管壁の内側をおおっている血管内皮から外にでます。そこで増殖をします。

ここまでは転移のメカニズムがわかっていますが、がん細胞が基底膜にでるためには特殊な酵素を作り出さなければなりません。また他の臓器に転移する場合でも特殊な酵素を作り出さなければ転移は成り立ちません。

血流の中にがん細胞があってもかならずしも転移するとは限りません。しかし原発が仮に早期の状態で発見されても、がん細胞がすでに特殊な酵素を作り出し転移している場合があります。

再発が術後発見される場合2年以内が多いのですが、それは原発のがんが数ミリの時点で転移していた可能性があります。それとは逆にリンパ節を広範囲に郭清をする拡大手術をしておそらく転移すると思われた例でも再発、転移をしないで治癒した例も多々あります。

摘出した臓器やリンパ節を、病理医がスライスして顕微鏡下で詳細に調べて所属リンパ節にがん細胞が認められても遠隔転移しない場合があります。

所属リンパ節にがん細胞が認められた場合転移していたことになるのか、ならないのか意見が分かれるところです。

今でもがん細胞を病理で調べても転移するがんなのか、転移しないがんなのか本当のことはまだわかっていません。

がんは遺伝子の病気である以上、遺伝子レベルでの研究が進むと思われます。
がん細胞の遺伝子を解析し適切な分子標的薬を投与する治験が始まっています。
しかし、局所再発にしてもそうですが、遠隔転移するか、しないかの解明には今後、時間がかかると思っています。

がん治療全体においても同じことが言えます。手術はがん治療の通過点です。再発をおこした患者さん、手術ができない患者さん、ステージが進んだ患者さんは、こころのケアがなによりの治療になります。