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がんの標準治療を選択するとき個々の状況に応じた個別化医療を行うことも普通になりつつあり、ほぼ全ての部位でステージ(がんの進行度を示す病期)が早期ほど10年後の生存率が上昇しています。

それでも、罹患率が増えている肺、膵臓、肝臓などの難治性の原発がんではここ数年の生存率は変わっていません。

【目次】
がん標準治療を選択するとき
最悪のことを考えながらも、最善を尽くし、明るく生きたいものです
進行がん再発がんは標準治療だけでは治癒はしない
治療の有用性と限界を知りましょう
各領域の専門性
がん治療は自分で納得して決めることも大切です

がん標準治療(個別化された治療)

がん治療は多くの要因に依存しますが、がんは早期に発見されるほど治療の成功率が高まります。現在は、患者さんのがんの種類、ステージ、遺伝子プロファイルに基づいて、個別に合った治療計画を立てることが重要です。有効性と安全性が確認された最新の手術技術、放射線療法、薬物療法(化学療法)などを利用して、がん組織を効果的に排除、がん細胞を抑制することが標準治療です。

治療の副作用を最小限に抑えつつ、患者さんの生活の質を維持すること、患者さんとその家族に対する心理的、精神的なサポートや理想的な緩和ケアが提供されることが必要です。

個々のがん患者さんに合わせた総合的なアプローチが、理想的ながん治療の実現に向けた重要な要素です。

がんゲノム医療

中核拠点病院、拠点病院は自施設でに専門的な知識やスキルを有するがん薬物療法や病理学、分子診断学の専門家などがが参加する「エキスパートパネル」を開催でき遺伝子解析による解析結果をもとに治療できます。

医療連携病院は、連携する中核拠点病院または拠点病院のエキスパートパネルに依頼し主治医も参加します。ただし、まだ個々の遺伝子異常に対応する治療効果が期待できる薬剤が揃っておらず、治療につながる患者さんは10-15%と少ない現状があります。がん遺伝子パネル検査では、遺伝子変異が検出されても治療につながらない場合もあります。

高性能の遺伝子解析装置「次世代シークエンサー」は多数の遺伝子異常を同時に測定する「がん遺伝子パネル検査」に用いられています。日本では遺伝子配列、情報解析をおこなっている研究所は4カ所です

細胞療法「キムリア」、がん治療用ウイルス「デリタクト」
2019年3月に国内で承認されたCAR-T(カーティー)細胞療法「キムリア」があります。保険適応は、悪性リンパ腫と白血病で、標準的な治療で効果がなかった患者さんが対象になります。 東京大学医科学研究所 附属先端医療研究センター 先端がん治療分野で開発されました。遺伝子組み換え技術を用いて特殊なタンパク質CAR(キメラ抗原受容体)を発現させ体に戻します。

G47Δ(ジーよんじゅうななデルタ)がん治療用ウイルス「デリタクト」 がん細胞のみで増えることができるウイルスを感染させ、 ウイルスが直接がん細胞を破壊する治療法です。「東京大学医科学研究所 附属先端医療研究センター 先端がん治療分野」で開発されました。悪性脳腫瘍(悪性神経膠腫など)で治療効果を示すことが臨床試験で確認され2020年5月承認されました。一般名「テセルパツレブ」として第一三共から発売予定でした。現在は、まだ生産体制が整っていなくて供給は難しいようです。

細胞療法「キムリア」、がん治療用ウイルス「デリタクト」は 遺伝子組み換えの技術を応用していますが、自由診療で行われている遺伝子治療ではありません。 これからは、適応選択(保険適応)はひろがっていくと思われます。

ひとりひとりに合わせた治療を進める個別化治療も行われています
縮小手術が多くなってきました。原発の部位によっては術前、術後の抗がん剤投与のレジメン(がん薬物療法における抗がん薬、輸液、支持療法薬等を組み合わせた時系列的な治療計画をいいます)が組まれています。
機能温存を考慮した場合、強度変調放射線治療(トモセラピー)を含めた放射線治療を選択することもあります。

遺伝子検査
がん細胞の変異に合わせたより効果的な分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬(免疫チェックポイント分子による免疫抑制機能を活用します) を選んで治療するためのがんゲノム医療「がん遺伝子パネル検査」も最近普通になってきました。ひとりひとりに合わせた治療を進める個別化治療も行われています。

がん遺伝子パネル検査の結果遺伝子変異がみつかっても、それに対応する薬剤(抗がん剤など)が足りません。対象になる方は10~15%です。

抗がん剤を投与する前に事前に有効性がわかることは、副作用の軽減にも繋がり、標準治療でもやってみなければ、わからないということは少なくなりました。

光免疫療法
がん細胞とだけ結合する抗体薬で近赤外光のレーザーで、ダメージを与える次世代の治療法(光免疫療法・近赤外線免疫療法・薬剤・放射性医薬品など)は一部治療は始まっています。がん細胞に発生しているタンパク質と結合する抗体にだけ選択することができるなら非熱性の赤色光を照射することで、がん細胞だけにダメージを与えることが理論的にはできます。しかし、がん細胞の標的であるEGFR(上皮成長因子受容体)だけに結合するかはわかりません。分子標的薬と理屈は同じです。

遺伝子検査・集学的治療
「エキスパートパネル」では、遺伝子変異に対する対応する薬剤の有無や一人ひとりの患者さんに適した薬剤を検討します。適応になる薬剤の有効率は10%くらいですが、今後の新薬に期待したい分野です。より高い治療効果を目指して、これらの治療法を組み合わせて集学的治療をおこないます。さらに先進医療(重粒子線療法など高度な医療技術)を受けることもできるようになってきました。専門分野も細分化されてきました。

最悪のことを考えながらも、最善を尽くし、明るく生きたいものです

手術でがん巣を摘出すれば、かなりの治癒率が期待できるものの進行した段階で発見され、転移が見られるような場合には根治的手術による治療は限界があります。生活の質(QOL)の改善を目的とした姑息的治療も行われます。

「姑息」という言葉は「一時的な」「対症療法」という意味です。 手術で治癒が望めない段階になって診断された場合や再発したときなどには、抗がん剤治療や放射線治療が行われるのですが一時的にがん巣を縮小することができても多くの場合、決定的な治療法とはなりません。

問題は副作用です。白血球の減少などの骨髄抑制、腎機能の低下など、さまざまな副作用をともないます。また当初、抗がん剤でがん巣を小さくできても、やがてがん細胞のほうに耐性ができ効かなくなります。再び腫瘤が増大してきたり遠隔転移も認められてくると、それまでの抗がん剤では抑えることができなくなりますから、違う抗がん剤を使用することになります。薬剤耐性が出るのは、がん細胞の多様性があるからです。

例えば1次治療(ファストライン)の抗がん剤効果が乏しくなったなどは2次治療(セカンドライン)に移行します。 ゲノム検査で有効性のある薬剤が適応になるならよいのですが有用性のある薬剤の選択は少なくなります。その次は、3次治療(サードライン)ですがそこまでの薬剤投与は、体力的にも副作用で難しくなります。

効果よりも副作用が明らかに上回るような抗がん剤治療は受け続けるべきではないでしょう。

これまでのがん治療の歴史から、抗がん剤を無理に受け続けることの是非が問われるようになり、最近それを裏付ける質の高い臨床研究が報告されるようになってきました。しかしながら、がんの増殖速度が著しく速い場合、手術以外に現状として直接的にがんの勢いを抑える効果が期待できる治療として、抗がん剤を上回る治療の存在は示されていません。

副作用もあるけど、他に治療手段がない場合やはり抗がん剤投与します。がん治療の歴史はそうでした。何度も繰り返し投与しているうち、ついには、あらゆる抗がん剤が有効性を示せなくなります。身体の免疫抵抗が壊滅状態になってきます。やがてほとんど治療効果がなくなったとき、患者さんが希望をもってなんとか治療を受けたいと願っても「これ以上、治療する手段がありません」といわれることになります。

抗がん剤治療を専門的に行うオンコロジスト(腫瘍内科医)だけではなく、がんにかかわる診断・治療などを行う医療従事者は抗がん剤治療を続け、進行がんの場合でも、あたかも標準治療では当然のように、ぎりぎりまで抗がん剤治療をほとんどのケースで行います。抗がん剤の利益と副作用の不利益を患者さんも話をしてほしいとこです。効果よりも副作用が明らかに上回るような抗がん剤治療は受け続けるべきではないでしょう。

もちろん全ての抗がん剤治療を否定しているわけではありません。 抗がん剤治療を始めて腫瘍マーカーも下がり、パフォーマンスステータス(患者さんの日常生活の制限の指標)も向上した患者さんもたくさんいました。それでもギリギリまで標準治療を続けるのではなく、早期の緩和ケアの選択も大切です。その方がどれだけ患者さんに有意義な時間が取れるか。是非理解してほしいところです。在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院なども余裕を持って利用するのも一考です。

日本人の8割以上の方がが病院で死を迎えています。だからこそ医者の言葉は重く、患者さんや家族は医者の一言に一喜一憂します。それだけに医者の言葉は重いはずですが、全てにおいてきちんとした病状や治療方針が伝えられているということはありません。 私は、決してがんで悩める患者さんを惑わすために、いっている訳ではありません。純粋にいまのがん治療が「これでいいのか」という疑問を言葉にしているのです。

がんの告知や治療方針あるいは余命宣告が普通にはなりましたが、特に若い医者に多いのが患者・病気と真っ向から向き合う気持ちがないのか、患者さんの気持ちを無視している場合があります。当然本人は悪意はないのですが、普通だと思っていても患者さんの心は傷つきます。そんな相談も多いです。典型的なパソコンの画面を見て話す医者ですね。人間の心の微妙なことがわからないのです。

期待していたのに、自分の期待感より満足度が低いと、この気持ちが自分の中でストレス、不安感を生んでしまいます。 患者さんも「標準治療を受けていれば安心」と思っている人は多いです。 主治医も「これが標準治療です」と、マニュアルに書かれた治療を提供します。

治療におけるやってほしいこと、やってほしくないことなど自分の考えを伝え、事前に医療者側と大筋で合意しておいた方が良いと思います。遠慮なく話すことでお互いの考えを明確化して、ふわっとした期待感による無用なすれ違いを起こさないことも大切なことです。

進行がん、再発がんは標準治療だけでは治癒はしない

人間の体は約60兆個の細胞でできており、全ての細胞には細胞周期があり、絶えず細胞分裂で新しい遺伝子を複製しています。 ところが、細胞のがん化は何らかの原因によって細胞の複製に必要な遺伝子にダメージが加わることで細胞が変異します。タンパク質、炎症性サイトカインも関与している要因もあり、がん細胞にとって、増殖する可能性のある環境が作られてしまうこともあります。全てが証明されているわけではありませんが発がん物質(放射線、化学物質など)の影響で遺伝子が突然変異することもあります。

それ自体は健康な人でも日常起こっていると考えられています。そして変異した細胞の多くは免疫の力で体外に排除されますが、なかには異常増殖を引き起こすものもあります。 それが何年もの時間をかけて異常な増殖を繰り返して、がん細胞は塊(組織)になって「腫瘍」を形成します。全身のあらゆる臓器、部位に発生します。がん化した細胞の組織型は多数あり、腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌などと組織型も分類されています。未分化がんは、細胞としては未熟な状態で悪性度は高いです。

「原発巣」は、手術や集学的治療の進歩で、かなり治療可能になりました。原発巣が原因で死ぬことは少なくなりました。 転移したがんの増殖を抑えることができる方法が見つかれば、がんによる死亡率は激減します。しかし、転移するメカニズムはとても複雑で難しくその発症メカニズムは分かっていません。がん細胞に遺伝子変異が加わることによって、遠隔転移する能力を獲得するのか、それとももともとのがん細胞に最初から転移する能力があったのか現在の医学では、仮説はありますが、本当のことは分かりません。

証明するのは困難ですので、転移が認められない場合(画像検査でも10mm以下の転移巣を発見することはできませんので、正しくいうと転移巣があっても画像上発見ができない)、手術が選択され原発巣の摘出がおこなわれます。ですが原発巣を摘出しても数年後、再発することも珍しくはありません。術後補助療法としての抗がん剤を投与しますが、それでも再発するときは再発します。放射線療法も予防的効果は未知数です。

治療は固形がんの場合は手術が中心となり完治された方は多数います。ところが手術後、再発してしまった場合は深刻になります。患者さんの命を助けようと懸命に努力している医師、そして闘病生活を送っている患者さんに対しては申し訳ないのですが、多くの人が感じているように極端な言い方をすれば、これらの集学的治療は早期がん・転移しないがん、治るがん以外では限界に来ています。

確かに、腫瘍マーカーやCT、エコー、MRI、PETなどさまざまな検査方法が登場して精度が上がったため、病状の把握が可能になりました。

しかし、進行がんイコール末期がんではありませんが、標準治療だけでは治癒しないという事実を知ってほしいです。

悪性度の高い進行してしまったがんにおいては、どうしようもない状況は10年前、20年前、30年前と比較してもほとんど変わっていません。

手術後に再発をくりかえしたり、或いは手術が出来ないほど原発巣が隣接臓器まで浸潤していたり、遠隔転移している場合は化学療法オンコロジスト(腫瘍専門内科医)が治療にあたる事が望ましいと思いますが、まだ日本では腫瘍専門内科医の数が少ないのが現状です。

また最近では「分子標的薬」が使用されることも多くなってきました。しかし分子標的薬にも副作用の問題があります。しかも従来の化学療法の抗がん剤の副作用はある程度はパターンが分かっていたのですが、分子標的薬はより対応が難しい面があります。全てのがんではありませんが、がんが進行した場合、これらの治療方法は延命することを期待するしかない現状は長年変わっていません。

「免疫チェックポイント阻害薬」も有用率は約10%と期待値を下回っています。遺伝子変異に合う薬剤投与ができた患者さんは遺伝子検査を受けた方の全体の20%以下です。

国内の医療機関10カ所で免疫治療薬(がん細胞に直接作用するのではなく、がん細胞を抑制するTリンパ球に働きかける免疫療法の薬剤)の治験を実施した結果を2020年5月、 米国臨床腫瘍学会特別臨床科学シンポジウムで発表されました。原発巣特定できない原発不明がんは、非常に治療が難しいのですが、 商品名:オプジーボの投与により効果があった中央値は12・4カ月で、原発不明がんで最も一般的な治療法の約2倍の有用性があったとの報告がありました。一時的にがんが巣が小さくなったかどうかよりも、がんの進行を抑えられた期間が評価される時代です。

制約もありますが、遺伝子パネル検査で、たくさんの遺伝子変異を調べられるようになったので、将来有効な化学療法療にまでつなげることができる可能性もあります。

少数転移(オリゴメタスタシス)
大腸がん以外のがんではガイドライン等で、明確に記されていませんが、がん細胞が広範囲に転移する能力を獲得しておらず、少数個のがん巣の転移のみ存在する状態の患者さんが少数ですが、いるとも考えられています。 多くの種類のがんで認められ、転移しない限局がん、と多発転移する状態の中間的状態の少数転移(オリゴメタスタシス)と呼ばれています。しかし転移病巣に対する切除に対して、その確定診断法は定かになっていません。

最先端治療、新しい薬物療法も、最善の治療のことではありません。ランダム化比較試験(多くの手間がかかりますが、治療効果の程度を数字で表すことができます)が行われて初めて有効性が証明されます。「ランダム」とは日本語で「無作為」と訳します。人為的な操作が入り込まないということを意味しています。一番信頼のおける臨床試験です。副作用や安全性も考慮して行われています。いくつかの臨床試験も毎年行われていますがそれでも承認される国産の抗がん剤は少ないです。

日本の行政は方向転換が苦手で、過ちを正すのにあまりにも時間をかけすぎるとこがあります。がんの罹患率、亡くなる方も増えています。これを高齢化にともなう現象として諦めて、受け入れるべきなのでしょうか。世界に共通する現象ならまだしも、海外に目を向ければ、アメリカなどは、がん(悪性新生物)死者数が減少に転じています。標準治療で、がん死者数の増加を食い止められないのであれば、抜本的な見直しを図るべきです。

通常のがん治療(標準治療)の有用性と限界を知りましょう

ほとんどの医者が患者さんに伝えていないことがあります。それは、再発・転移が見つかった時点で、治癒は難しいということです。基本的には完全に治すことはできなくなるのですが、けれど、はっきり伝えずに「がんが再発しました。でも引き続き治療をしていきましょう」とだけ伝える場合が多いのですが、 それで患者さんは「治療すれば治るんだ」と期待してしまいます。

再発・転移が見つかった時点で、がんは全身病になります。どんな治療をしても、完全には治せず延命の効果しかないのです。

再発・転移がんを完治できないまでも、早く発見して抗がん剤、放射線で叩いた方が、 長生きできるのではないか、そう考えになるかもしれません。ところが、いくら早く転移がわかって早期に治療しても延命効果は、みなさんが考えているほどは期待はできません。

再発がんは、どこにできたがんにしろ治療は難しくなります。再発・転移を予防する薬剤、治療法はありません。CTやMRIは組織の形態を観察するための検査法で、PTE検査は生体の機能を観察することに特化した検査法ですががん巣の拡りがある程度わかるだけです。 わかるだけで治るわけではありません。

現在、細胞のがん化については未だに解明されていません。生物学(自然界で生きているあらゆる「生物」を研究する学問)・医学(臨床・基礎研究)では、標準治療であろうと、革新的な治療であっても持続的な奏効をもたらすがんの治療法は存在しません。それでも現時点で一番いい治療は保険適用となっている標準治療です。


遺伝子を含む染色体、解析により、同じ人にできるがんでも進行する過程、転移の部位が変わるうちに原発とは別の遺伝子が発現することがわかってきました。薬物治療を翻弄するジレンマも出てきました。「遺伝子変異」は今や「多様性」と考えるべきです。 同じ臓器のがんであっても異なる複数の細胞によって構成されています。 これを「がん細胞の不均一性」といいます。

「がん細胞の不均一性」を考慮しなくては、今の画一的な標準治療では十分な効果は期待できないと思います。遺伝子を含む染色体、解析により、同じ人にできるがんでも進行する過程あるいは、転移の部位が変わるうちに原発とは別の遺伝子が発現することがわかってきました。

これが抗がん剤に対してがん細胞が耐性を獲得する理由です。 最初は有用性もあり利益(ベネフィット)もありましたが後に、 必ず薬剤から生き延びるがん細胞がいますので増殖してきます。がん細胞の多様性があるからです


一般的に、術後、再発を抑えるためと称して抗がん剤による療法が行われることが多いのですが、再発する、しないは個人差あるいは、がん腫の違いがあります。 術後の抗がん剤を行うか否か、行う場合にはどれくらいの期間抗がん剤治療を行うことが、その方の利益(ベネフィット)なのかまだわかっていません。

再発してしまう可能性が高い場合もありますが、再発の心配がほとんどないと考えられる場合もあります。それでも再発の抑制になるのかわかりませんが、抗がん剤の投与をする場合は多いです。遺伝子(ゲノム)検査で過剰な抗がん剤投与を控えるための研究も進んでいます。

生体にダメージを与えないで治療効果を出す本当の意味で個別化された、がん治療が求められています。 遺伝子を調べて薬物療法に役立てる検査「遺伝子パネル検査」も保険適用になりましたが、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤、抗体薬物複合体などの有効的な薬剤を投与できる割合は15%くらいです。

よく知られている遺伝子に「BRCA」があります。DNA(デオキシリボ核酸)に生じた変異を修復するBRCAタンパク質は細胞のがん化を抑える遺伝子です。BRCAタンパク質の異常があると遺伝性乳がん・卵巣がんだけではなく食道がん、胃がん、胆道がんを発症しやすくなることはが改めてゲノム解析で確認されました。それでも、なぜ特定の細胞ががん化するのかヒトゲノムの完全な配列を解析することができた現在も根本的なことはわかっていません。


固形がんの場合、外科手術はがん治療における第一選択肢です。手術でがん巣を取りこぼしなく摘出します。またIMRT(強度変調放射線治療)は腫瘍だけに高い照射線量を照射することができます。手術や放射線などの局所治療が有効です。全身治療として、抗がん剤もありますが今後はケミカルサージェリー(光、超音波、熱中性子線を患部にピンポイントで照射する手技)、ドラッグデリバリーシステム(中性子捕捉治療など)も次世代の治療法の選択になるかもしれません。

厳格な承認条件がありますが、がん細胞の多く現れるたんぱく質に結合する薬剤を投与してレーザー光線を照射する「光免疫療法」も一部のがんでは有効となりつつあります。「がん細胞」だけにダメージ与える治療です。5年間以上再発がない場合完治します。

各領域の専門性

今の診療は大学病院をはじめがん専門病院など各専門分野に分かれています。学会もかなり専門分野に分かれています。 もちろん病気は慢性疾患を含めて多数あります。

がんの病気だけでも日本がん学会を初め各領域の専門性があり、例えば「胃がん」を扱う医学学会でも、外科学会、消化器外科学会、胃がん学会、がん治療学会など多くの学会があり、毎年総会が開かれ多くの演題が発表されます。

また各領域の「認定医」「専門医」「指導医」の制度もあります。この制度は高度な知識や技術、経験など資格審査もあり一般的に考えて肩書きのある医師の専門性に期待できます。「認定医」「専門医」にならなければ、違う領域の診療、治療出来ないと言うことはないのですが、それだけ専門性が問われる医療システムになってきたということです。

当然ですが誰でもその領域の症例数が多く治癒率も高い信頼のおける医師に総合的に治療を受けたいと思うでしょう。

がん治療は自分で納得して決めることも大切です

確かにがん巣が一つの臓器に留まっている限局では部分病との解釈もできるかもしれません。 当然ステージも低いので治癒できる可能性は高く治療法の第一選択も手術だけではありません。

治療面は、相当前から手術や薬剤あるいは、放射線など集学的治療に頼るしかなく、根治的な治療ができているわけではありませんでした。 現在は、 手術でも手術支援ロボット、鏡視下手術術も普及してきました。またがん細胞だけにピンポイントで放射線を当てることも可能になり、薬物治療と併用することで高い治療効果を上げています。

「分子標的治療薬」「免疫チェックポイント阻害薬」などは様々ながんの生存率を引き上げる可能性があります。がんと診断されたとき大切なことは全て病院任せ、医者任せにしないことです。積極的に治療法を医療者側から聞きましょう。そして治療法を納得して決めることも大切です。


原発巣から他の部位に転移した場合、がんは全身病になります。 治療手段も限られてきますので、患者さんの治療は同一には行えません。がん診療拠点病院では各種がんの生存率を公開しています。医療の透明性確保、患者さんの自己決定権の尊重があるからです。その上で治療法の決定に至る過程は様々ですがオーダメード治療が重要になってきます。

インフォームドコンセント「正しい情報を得た(伝えられた)上での合意」で納得のいく治療を選択しましょう。

がん細胞の遺伝子構造は一人一人異なり、一つとして同じがんの遺伝子はありません。

だから治療法も人それぞれ違う。標準治療でも「これが絶対」という治療法はないのです。

がんの転移には、がん幹細胞が関係していますが治療ではあまり考慮されません。

主治医とは納得できるまで話し合い信頼関係を築きましょう。主治医の個人的な意見に留まらず、考えられる治療法についての説明を受けましょう。そして、がんについての知識を集め納得する治療の選択をしましょう。

受けられる治療法の効果と限界、危険性や副作用を知りましょう。

できれば生涯付き合えるような信頼できる医師を選ぶことです。
 


私が医療の現場で気になるのは、インフォームド・コンセントについてです。説明と同意が大切なことだとわかりますが、その結果どうなったか。極端な例は医者は説明だけして、患者さんに決めさせるスタイルになってきました。

いままでは医者のいうままに副作用にも耐えて抗がん剤治療してきたのに、がんが進行して治療法が行き詰まってくると、あなたの選択肢はこれだけですから、あとは自分で決めてくださいと患者さんを困惑させるやり方です。

本来なら、治療の選択肢について、それぞれのメリットとデメリットを時間をかけて納得するまで説明し、そのうえでどうするかを一緒に考えていくのが医療者側の仕事ですがそれを事務的にやるものだから、さらに患者さんは突き放されたように受け止めてしまいます。

かなり進行してくると標準的な治療が難しくなって治療法は限られてきます。体力的に化学療法を続けられなくなるとあるところでいきなり「もう治療法はありません」と精神的にも見放されてしまうのが日本のが病院です。 その時点で緩和ケア医やホスピスを見つけるのも難しいですし、結果、多くの人が難民のようにさまよってしまうことになるのです。

治療法がない患者さんに向き合っていくスキルが日本の医療界にはないのです。「目標として、QOLを保ちながら、共存していきましょうと。」とはいうものの、最終的に自分で身の回りのことができなくなったときのことを想定して、病院で治療を継続するのか、在宅などの緩和ケアがいいのか、患者さんが考える機会、時間が少ないように思えます。 緩和ケアの大切さは以前から指摘されているのに、一向に進みません。

がんの進行とともに生じる心のケアも重要です。医師は、患者さんとのコミニケーションが大事なのに不得意な人が多い印象があります。裁量権が比較的大きな職業なので、独占的になりやすいです。受診先を選択するときは、こうしたことを念頭に置き、自分に合った医師を見つけてください。

自分に合う治療法にめぐり合えるのか患者さんは考えてしまいます。結果、自由診療(代替療法)のクリニックに行く要因にもなっています。

代替療法の一つである自由診療は一部を除き、科学的根拠が不明確で、標準治療に比べてはるかに信頼性に劣ります。場合により高額な医療費にもなります。 価格が高いほど効果が期待できる訳ではありま

頼れるがん治療アドバイザーを目指します 

がん治療は専門的な知識や判断が必要であるため、院内カンファレンス(病状検討会)を踏まえた上で、最終的に主治医や担当医から治療法の選択肢を提示され、意思決定を求められるでしょう。患者さん自身が治療に関して理解を深め、納得した上で治療を進めることができるよういつでもサポートできるアドバイザーになりたいと思っております。悔いの無い治療を心より願っております。

医療不信のような状況になっているのは、患者さんとのコミュニケーションがとれていないことも原因だと思います。標準治療が確立されている今も、年に100万人近くがんに罹患しています。その人々が、納得できる治療選択を一緒に考えたいと思います。


がん標準治療を選択するとき容「がん標準治療」生存率「がん標準治療」生存率

がん治療の現状 手術(外科療法)
がん治療の現状 薬物療法(抗がん剤)
がん治療の現状 放射線療法
がん治療の現状 がん治療の難しい理由
がん治療サポート内容 最善のがん治療を受けるために
「がん治療相談」がん治療アドバイザーによるサポート
オピニオン(がん治癒への道)
がん標準治療を選択するとき
がん先進医療(精密医療)
がん重粒子線治療・陽子線治療
がん免疫療法
がん発生メカニズム
がん再発・転移
がん幹細胞
がん悪液質(あくえきしつ)
がん標準治療を選択するとき
「がん標準治療」生存率
がん遺伝子治療
標準治療以上に自由診療の治療成績がよいということではありません
新型コロナウイルの基本知識