がん治療の難しい理由

がん治療を困難にしている理由 たった1個のがん細胞は10年から20年あるいはそれ以上の長い年月かけて何段階にも変化して悪性のがんは生命を脅かすまで増大します。1個のがん細胞は約30回の分裂で約1cmの塊で1gです。40回の分裂で約10cmの塊で1kgの大きさに成長します。

1個のがん細胞から分裂がはじまって30回目くらいまでの増殖過程は最新の画像診断機器を使っても人間の目はまだ異常影としてとらえることはできません。大きさが1ミリのがん細胞の塊は約1,000万個です。

早期発見といわれている1cm位の大きさではがん細胞の塊は約1億個です。仮に10cm大の大きさのがん巣が人間の生命を脅かす大きさとして、約1cm位の固形がんではがんの寿命としては4分の3を経過した状態です。

3DCTなど最新の検査機器を使って検査をしても数ミリの固形がんは一般的には早期発見は出来ないのが現状です。この状態ではほとんど自覚症状はありません。

40回分裂して1kgの大きさですから、分裂が約30回以降でないと発見できないのです。このことは、早期であっても細胞レベルでは30回目以降の分裂ですので、はたしてその時点で本当に早期と言えるのか疑問に思えます。

ただし細胞分裂の過程は様々な要素がありますのですべて一定とは限りません。分裂が驚くほど早いがん細胞(がん巣)もありますし、1年間たっても大きさが変わらないがん細胞(がん巣)もあります。

悪性度が高いがん細胞(未分化型タイプ)ほど分裂の速度は速くなります。またがん化した1個のがん幹細胞の種類によって転移するかしないかが決まると考えられていますが、今の医学では最新の検査機器を使っても分かりません。

臨床、基礎研究で多くの医師、化学者が長年にわたって研究しているのにかかわらず、今後さらにがんによる罹患率、死亡率、が増加することが確実に予想されます。末期の場合、完璧な治療法がないというのが現状です。

平成19年4月1日からがん対策基本法が施行されましたが、がんの罹患率は変わっていません。極端な言い方をすればがんの病変が発見された時、大きくても小さくても「治るものは治るし、治らないものは治らない」としか言わざるをえない状況は何十年も変わっていません。

「治るがん」「治らないがん」固形がんの場合

治るがんとは、まだ転移を起こしていない、転移を起こしていても手術で切除、摘出できる範囲にしか転移していないがんのことをいいます。放射線療法でも同じことがいえます。このようながんを「局在がん」または「限局がん」と呼ばれています。局在がんなら手術で摘出できれば治ります。

一方、治らないがんとは、どんな治療をしても治癒が不可能な転移を起こしてしまったものを指します。がんが、複数の臓器にできると、手術で摘出することはできません。

化学療法でも、放射線療法でも対処することは難しくなります。積極的な治療をおこなうと今度は、体全体の機能が落ちてきます。

遺伝子の変異で細胞が、がん化すると、がん細胞は細胞分裂して増殖していきます。細胞分裂のスピードが速いものは悪性度が高く、遅いものは悪性度が低いと考えられます。

転移のメカニズムは、まだ解明されていませんので「治るがん」から「治らないがん」に移行するのか、わかっていません。

がんの原発巣が数ミリで、すでに転移する性質のがんは、転移していると考えると矛盾がありません。細胞分裂のスピードは、あるときから急加速していく可能性もあります。たとえば、私たちの体は子供の頃は、ものすごい勢いで成長して、大人になると成長がとまります。一定のスビードで大きくなるわけではありません。

それと同じようにがんも、ある時期、急激に成長する可能性もあれば、ある時期から成長がゆっくりになる可能性もあります。

局所転移(原発巣付近に転移するもの)領域転移((局所リンパ節に転移するもの)遠隔転移(原発巣より離れた遠隔部位に転移するもの)転移する性質のがんは最初から決まっています。リンパ行性転移(リンパ流に沿って転移するもの)血行性転移(血流に沿って転移するもの)播種(腹腔や胸腔といった漿膜を突き破って他の漿膜面に転移するもの)も同じです。

治るがんから治らないがんになるのか、がんの成長のメカニズムについては、未知の領域が多く今後の研究を待つよりないというのが現状です。

 

早期発見の意味は

早期がんといわれる時期に手術して切除、摘出して、標本を病理検査などをしてもその後100%再発するかしないかわからないのです。

1cmの早期がんと呼ばれる状態で仮に発見されたとしてもがんの寿命(生命の危険を伴う大きさ)としてはすでに4分の3を経過しています。

実は2mm程度の大きさが分岐点なのです。がんがそれ以上の大きさに成長するには新たな血管が必要になります。血管新生がおこったがんは急速に増大しはじめる傾向にあると考えられます。

固形がんの場合はCT、PETなど最新の検査機器を用いても診断できる大きさは5mm程度です。それ以下の大きさでは発見できません。

また悪性度の高い浸潤がんはすでに5mm以下の状態でも細胞レベルで遠隔転移をおこしている可能性があります。1cmで約10億位のがん細胞の塊になります。

しかしながら転移能力のないがん細胞は仮に5cm位になっても転移はしません。がん細胞が1cmになるまでは遺伝子変化をする可能性はありますが、その時点で転移がないものは仮に5cmになっても転移はおこさない可能性が高いのです。

その一方ではいくら小さい状態で発見され手術をしても転移するものはすでにしています。それが腫瘍マーカーや細胞診などで術前に分かれば良いのですが転移するのか、しないのか病理の分野でもまだはっきりしたことが100%分かりません。

術後に再発や転移が分かった場合は今の標準治療(保険で認められている治療)では治癒はむずかしいと言わなければなりません。がんの治療成績は上がっているように思われますが、治療成績が上がったようにみえるのは診断機器や技術の向上で見つかった多くの早期がんと呼ばれている治療成績によるものなのです。

がんの検診にも新しいコンセプトが必要かも知れません。

たとえば消化器のがんが浸潤する場合は粘膜下層、固有筋層まで浸潤しさらに腹膜まで浸潤するのはがん細胞の遺伝子に特殊な能力が備わっていると考えられます。

ですから粘膜内あるいは固有筋層までで止まっているがんというものは元々そういう能力しかないがんだと思います。浸潤する能力を持っていないあるいは備わっていないがん細胞は命を脅かす事態にはならないと思います。

「がんは徐々に広がっていってあるところまでいくと全身に広がる」という考え方は相当前に否定されています。

どこの部位に発生したがんでもいまや拡大手術から縮小手術に変わってきました。つまり拡大手術も縮小手術も治癒率は変わらないということです。

その事は進行がんにもあてはまります。たとえばリンパ節を広範囲に郭清をする拡大手術をうけて、その後の病理検査でおそらく転移すると思われた例でも再発、転移をしないで治癒した例も多々あります。

その逆に早期といわれる1期の場合でも数年後に再発をおこす事もあります。手術可能ながんに対しては術者は根治手術を目指しますが、すでに微小ながん細胞が転移していた場合は数年のうちに転移がおこる可能性があります。

早期がん、進行がんで再発もなく治癒した場合には手術が有効だったといえます。しかし手術は成功したのにその後再発することもありそのことが、がん治療の難しさをあらわしています。

早期発見が鍵?

2016年7月国立がん研究センターによる分析で、早期で発見されるほど5年生存率が高いことが報告されました。

症状が出にくい部位ほど発見が遅い傾向があり生存率に差がありました。進行度として、臓器内にどまる初期のがんは「限局」隣接する臓器への浸潤やリンパ節に転移したがんは「領域」他の臓器に転移したがんは「遠隔」の3段階で示されました。

広く使われている「ステージ」は、部位により定義が異なるとして使用はしませんでした。 早期の段階で発見される割合が高い部位としては、皮膚、咽頭、膀胱、子宮体部、前立腺、乳房が挙げられ、逆に診断時に転移があるなどの進行している割合が高い部位には、卵巣、肺、食道、胆嚢、悪性リンパ腫、膵臓が挙げられました。

2016年 がん5年生存率

死に至るがんはほとんど転移がんです。がんには転移するがんと転移しないがんがあり、転移するがんは治せないことがわかります。

自覚症状が無い非浸潤性(上皮内にがんがとどまっている)症例でも手術の対象になりますので、自覚症状がないがんを発見しても、そのまま放っておいたときに致命的ながんになるかどうかは今の統計ではわかりません。

確かに早期で見つけることは理論的に悪くはないと思いますが、総合的に考えて利益があるかどうか難しいところです。一般的に「早期発見」「早期治療」を訴えていますが、検診を受けることで、どれだけ利益があるのか、あるいは、どれだけ不利益があるのか、という説明は、あまり成熟しているとは思えません。

検診によって、細胞分裂のはやい進行がんを、早期の段階で発見することは無理があります。検診で見つかる多くのがんは、進行がゆっくりで、検診で見つけなくても自覚症状があって受診してからの治療でも治癒率は変わらないのです。

検診で、早期発見しても、ただ、早期がんが増えるだけであって、進行がんが減ったり、死亡数が減ったりすることは、ありません。 結果、治療しなくてもいい症例の人もがんと診断され罹患率が増えつづている現状があります。

治療の必要のないがんも発見された場合、手術適応になります。一番知りたいのは、検診で、発見されたとき治療を受けるのか、経過観察がベストなのか、エビデンス(科学的根拠)がわかっていません。

ステージが進んだ状態で発見された患者さんが、1年前、あるいは2年前に検診で発見されて、早期治療を受けていたら治っていたとも簡単にはいえません。

悪性度の高いがんは仮に1cmの状態で発見されても、既に転移しているからです。

がん検診を受けない人の選択も社会として尊重すべきです。 また検診で、総死亡率を減らす効果はないという事実を率直に認めることも大切です。

一方転移しないがんはそのままの状態でいることも知られています。増殖しても転移しないがんは早期発見でなくても、手術や放射線治療で治ります。

がん検診のメリット(利益)ばかりを強調しないで、デメリット(不利益)も知らせてほしいと思います。

がん検診精度に疑問

総務省が行ったがん検診の精度を保つために都道府県が実施する事後評価について、17都道府県を抽出して2012~2014年度の状況を調査したところ、約4割にあたる7道県で不備が見つかったと2016年10月発表しました。

ある医療機関では12年、13年に胃がん検診を受けた後、精密検査が必要とされた人の割合がいずれも30%を超え、適切とされる値(11%以下)の3倍にあがりました。総務省は「多くの異常のない人が、がんと疑われたと考えられる」と指摘しました。

逆にがんがあるのに見逃したと疑える例は見つからなかったとしていますが、はたして本当はどうだったのかわかりません。無意味な再検査のおかげで病院の外来は混み無駄な医療費もかかります。

事後評価は07年施行のがん対策基本法で定められました。現実問題として検診は施設による差が大きくて一般の人が思っているほど期待はできない内容でないことを認識すべきだと思います。

各領域の専門性

今の診療は大学病院をはじめがん専門病院など各専門分野に分かれています。学会もかなり専門分野に分かれています。

もちろん病気は慢性疾患を含めて多数あります。がんの病気だけでも日本がん学会を初め各領域の専門性があり、例えば「胃がん」を扱う医学学会でも、外科学会、消化器外科学会、胃がん学会、がん治療学会など多くの学会があります。

毎年総会が開かれ多くの演題が発表されます。

また各領域の「認定医」「専門医」の制度もあります。この制度は医療者側からみて意見は様々ありますが一般的に考えて「認定医」「専門医」の肩書きのある医師の専門性に期待できます。

「認定医」「専門医」にならなければ、違う領域の診療、治療出来ないと言うことはないのですが、それだけ専門性が問われる医療システムになってきたということです。当然ですが誰でもその領域の症例数が多く治癒率も高い信頼のおける医師に総合的に治療を受けたいと思うでしょう。

効果判定基準(奏効率)

CR 完全寛解・著効(すべての病変の100%縮小、消失が4週間以上持続)
PR部分寛解・有効(病変の50%以上の縮小が4週間以上持続)
MR(49~25%縮小)
NC不変(病変の50%未満の縮小または、25%未満の増大が4週間以上持続)
SD不変(病変の縮小率が30%未満、または20%以内の増加で、新病変の出現のない状態が4週間以上持続)
PD進行・増悪(最も縮小した時点から、25%以上の増大または、新病巣の出現)

上記の様に臨床試験で奏効率(PR)が20%で抗がん剤が医薬品として認可されます。また臨床試験では総合的なQOLや副作用、延命率などはあまり考慮されていないのが現状です。

手術を前提にした術前抗がん剤治療は有用性があると思います。
手術ができない固形がんの場合、いろいろな抗がん剤と組み合わせてもあまり生存率は変わりません。

再発した場合も同じです。固形がんに対しては抗がん剤が延命に役立つことを科学的に証明した臨床データはありません。個人差はありますが副作用は必ず起こります。がん巣が一時的に縮小してもリバウンドがきます。

CR(完全寛解)でも数ミリ以下はCTで検査してもはわかりませんので、その時点でも、100万単位でがん細胞が残り、やはりリバウンドがおこります。それは、がん細胞の多様性があるからです。

腫瘍縮小効果と延命が相関しない現実を前に何を目的に治療し、どのように向き合っていくかが大切だと考えています。

治癒があまり期待されない化学療法(分子標的薬など)で副作用が辛かったりすれば、その治療はやめてほかの治療に切り替える事の決断も大切です。

腫瘍の縮小だけが目的ではなく延命効果やQOLが得られるならば、その時々の状況で考えてほしいと思います。
がん治療セカンドオピニオン サポートセンターでは化学療法や奏効率のことも含めてお伝えします。